脳梗塞 頻度の多い3つのタイプについて


 脳梗塞は脳卒中の7割を占めていて、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症に大別されます。
 
ラクナ梗塞
 1mmに満たない細い穿通枝という動脈が閉塞します。脳梗塞は5mm程度の小さいものが多いですが、穿通枝は脳の深いところを栄養するため、小さい脳梗塞であっても体に影響がでます。手足の麻痺、しびれ、ろれつ障害、飲みこみの障害、物が二重に見える複視、ふらつきなどの症状が多く観察されます。ただ、症状の強さはさまざまであり、麻痺であれば少し手足が重いという程度から全く動かない重症までかなりの幅があります。ただし、意識障害はまれです。このため外来へは歩いて来院される患者様も多くおられます。また、ラクナ梗塞を発症しても症状がなく気づかないこともあり、これは無症候性脳梗塞といわれます。いわゆる「かくれ脳梗塞」といわれるものです。
 診断は神経学的な診察と、CTやMRI検査で行われます。
 治療は抗血小板薬や脳保護薬の内服治療や点滴治療を行います。
 退院後は再発を防止することが肝要となりますが、高血圧をはじめとする危険因子を治療したり、抗血小板薬の内服も効果があります。
 
アテローム血栓性脳梗塞
 数mm程度の比較的大きな動脈にアテロームが形成されます。このアテロームには血栓が作られやすく、これが剥がれて脳の血管へ飛んだり、あるいは段々と血栓が大きくなって血管を詰まらせることで脳梗塞を発症します。脳梗塞の範囲は比較的広いことが多いので、ラクナ梗塞でみられた症状に加えて、意識障害がみられることもあります。アテローム血栓性脳梗塞では、特徴的なBAD(branch atheromatous disease)といわれる状態が多くみられます。このBADでは、最初は症状は軽くても、段々と脳梗塞が拡大して症状が強くなる恐れがあり、入院での厳密な管理のもとで点滴と内服の治療が必要となります。また、入院中には高血圧などの危険因子の治療も併せて行うことはとても大切です。退院後の再発防止には抗血小板剤の内服治療が中心となりますが、アテロームを除去したり狭くなった血管をステントで広げる手術、あるいはバイパス手術などが選択されることもあります。
 
心原性脳塞栓症
 心臓内に出来た血栓が脳の血管を詰まらせます。非弁膜症性心房細動という不整脈が一番の原因です。発症はラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞と比べると急でさらに重篤です。強い麻痺や意識障害がみられます。大きな血管がつまるため生命に関わる事が多い脳梗塞です。tPA(アルテプラーゼ)による血栓溶解療法が可能なことがあるので、発症が疑われたらすぐに病院受診をすることが大切です。現在では、発症から4.5時間以内に治療が行われると、3-4割くらいの方に症状の回復がみられます。また心原性脳塞栓症はとても重篤であるので、脳梗塞にならないようすることがとても大切です。CHADS2スコアというスコアで危険因子を評価し、お薬を内服していくことが脳梗塞予防に有効です。