新しい片頭痛治療薬について(レイボー)
 

背景

 
 2022年6月より、片頭痛の新しい治療薬が使用できるようになりました。片頭痛の治療薬には、頭痛を止めるための急性期治療薬と、頭痛を出にくくする予防薬があります。今回の新しい治療薬は、急性期治療薬になります。
 片頭痛が起こる際には、様々な痛み物質が放出されます。その放出を調節している物質の一つにセロトニンがありますが、このセロトニンに関連したお薬が今回の新しいお薬です。片頭痛に関連したセロトニンには、1B/1D/1F受容体があり、従来のトリプタン製剤もこれら受容体に関連したものです。ただし、従来のトリプタンには、1F受容体のみを刺激するお薬はなく、今回の新しいお薬はより純粋に1F受容体を刺激できると考えられています。

 

新しい治療薬のメカニズムと効果・安全性

 
 より純粋に1F受容体を刺激すると、何が良いのでしょうか?従来のトリプタンは1B受容体を一緒に刺激してしまいます。1B受容体には血管収縮作用があります。このため1B受容体を刺激する従来のトリプタンは、脳梗塞をはじめとする血管疾患や、片麻痺性片頭痛、脳幹性前兆を伴う片頭痛には使用できないという欠点がありました。1F受容体をより純粋に刺激する新しい片頭痛薬は、このような病態でも使用することが可能となりました。
 この新しいお薬は、イーライリリー社より開発されました。レイボーといいます。一般名は、ラスミジタンコハク酸塩です。
 レイボーは片頭痛発作時に100mgの錠剤を内服します。1日200mgまで使用が可能です。これまでのデータからは、内服後30分から1時間で効果が見られます。また従来のトリプタンでは効果が不十分であった場合でも、レイボーでは効果が得られる可能性も示されています。
 レイボー市販前データからは、副作用のめまいが15%から20%程度に認められています。また傾眠が10%以下にみられます。なお死亡等の重篤な副作用の報告はありませんでした。