痙縮
脳卒中や頭部外傷後に起こる手足の筋肉のつっぱり
脳や脊髄では、興奮性の神経細胞と抑制性の神経細胞がうまくバランスをとって手足を動かしています。脳卒中や頭部外傷などで、このバランスがくずれ興奮性神経細胞が強くなると、筋肉の緊張が強くなり、手足をのばしたり曲げたりすることが難しくなります。この状態を痙縮といいます。
痙縮では、手の指が握ったままになり、手首や肘は曲がり伸ばしにくくなり、そして足はまっすぐになり曲げにくくなります。痙縮が強いと、筋肉のつっぱりそのもので痛みを感じます。御自分で動作をする事が難しいため、手洗いなどで家族の方の介助がどうしても必要になります。また、痙縮のために十分な関節の曲げ伸ばしが出来ないと、関節まで固くなってしまいます。
痙縮の治療には、しっかりとしたストレッチが必要です。そして、内服治療、ボツリヌス治療、外科的治療などがこれに続きます。症状の強さや、患者さんの状態に応じて治療を行います。ここでは当院で行う内服治療とボツリヌス療法について説明します。
内服治療
内服治療では、神経の興奮を抑えるお薬と筋肉の興奮を抑えるお薬を使用します。神経の興奮を抑えるお薬は種類も多く、患者さんに処方される事が多いです。お薬は少量から開始して、ゆっくりと少しずつ増量することをお話しています。これは、吐き気や眠気などの副作用を観察する意味もありますが、痙縮そのものを利用して患者さんが歩行を獲得している場合があるからです。痙縮治療のためにお薬を処方した場合、手と足の両者にお薬は作用します。手は柔らかくなればとても助けになりますが、足は柔らかくなるとかえって歩きにくくなる場合があります。このため、ゆっくりと患者さんの状態を見ながらの調整が望ましいです。
ボツリヌス治療
内服治療では満足な効果が得られない場合、手や指など特定の部位に効果をもたせたい場合には、ボツリヌス治療は適した治療と考えられます。お薬を痙縮の強い筋肉へ注射して、異常興奮した信号が筋肉へ伝わらないようにブロックします。効果は高く、内服薬で効果の得られなかった患者さんにも効果が期待できます。効果は3-4ヶ月程度でなくなるので、再度注射をする必要はありますが、内服治療で十分な効果が得られない場合には、検討する価値のある治療と考えられます。