しびれ
緊急性の高いものから調べていきましょう
しびれは幅の広い症状で、鈍い感じ(感覚鈍麻)、痛い感じ(感覚過敏)、いやな感じ(異常感覚)などがあり、さらには手足を動かしにくい(運動麻痺)もしびれと表現されることもあります。しびれは、それ自体が不快な症状であるため緩和的な治療が必要と考えられますが、まず、しびれの原因をしっかりと調べることが大切です。
以下に、しびれの原因となりうる疾患を挙げさせていただきました。脳神経外科領域が中心となっておりますが、皆様がお困りの際にお役に立てれば幸いです。
しびれをきたす疾患
脳卒中
脳神経外科でのしびれは、脳卒中の頻度が高いです。感覚を司る脳の領域やその通路に脳卒中がおこると、しびれが自覚されます。このしびれには特徴があって、一番多いのは片側同側の手と足のしびれです。手足とともに、顔面もしびれることがあります。また、手口症候群という手と口だけがしびれるパターンもあります。
このようなしびれがある場合には、脳卒中を疑って検査を進めます。しびれだけで発症する脳卒中は比較的軽症であることが多いのですが、徐々に進行する場合もあるのでしっかりと診断をします。なお、脳卒中の治療は、入院での点滴治療が原則です。
視床痛
脳卒中の後遺症としてしびれが残ることがあります。視床の脳卒中で起こりやすく、正座のようなしびれがあります。非常に不快な感覚であるため治療が必要になります。主にお薬の内服で治療を行います。
片頭痛
時として、片頭痛では頭や顔面に異常感覚を認めることがあります。さわるとピリピリした感覚です。これは皮膚アロディニアといって、脳が触覚刺激を痛みとして感じるようになる現象です。このため触っただけなのにピリピリとした感覚が生じます。皮膚アロディニアがあると頭痛薬の効果が減弱したり、頭痛が慢性化しやすくなりますので、注意が必要です。
緊張型頭痛
肩こり頭痛とも呼ばれる緊張型頭痛では、後頭部や頭全体に締め付けられるような頭痛がみられます。頭痛にしびれ感を伴うこともあります。
ギラン・バレー症候群
上気道炎や胃腸炎などの感染症の後に、手足の筋力が低下します。これに加えて、手足のしびれもみられます。感染症が刺激になって筋力や感覚をつかさどる末梢神経が障害されて発症します。症状は進行していきますが、少しずつ改善していきます。ただし、病気が進行してる間はしっかりと点滴治療をおこないます。治療の間に呼吸器管理が必要になることもあります。
頸椎椎間板ヘルニア・頸椎症
脊髄や神経根(末梢神経)の症状がみられます。脊髄の症状としては、両手のしびれと、ボタンの留め外しなどの細かい作業が難しくなる巧緻運動障害がみられます。また手や足の動きが緩慢になり、離握手や歩行がゆっくりになります。神経根(末梢神経)の症状としては、首を動かした際の痛みや、片側上肢のしびれや痛みがあります。
腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症
間歇性跛行という症状が多く見受けられます。歩くとだんだんと下肢にしびれや痛みが出現し、少し休むと症状が軽減してまた歩けるようになります。腰椎椎間板ヘルニアでは前屈みになるとしびれや痛みが出やすく、腰部脊柱管狭窄症では腰をそらせると症状が出やすくなります。しびれや痛みは障害されている部位によって異なり、坐骨神経痛のような片側だけの痛みもありますし、下肢全体に広がるような症状もあります。
間歇性跛行は下肢の動脈硬化が原因のこともあります。これは歩行時に血液が必要となっても、動脈硬化のために十分な血液が筋肉などに行き渡らないことが原因です。そのため、前屈みでも腰をそらせてもしびれや痛みは変わりがありません。
手根管症候群
手首には手根管というじん帯などで作られたトンネルがあります。正中神経がこのトンネルを通る際に圧迫されると、親指を内側に動かす母指球筋が萎縮して親指が動かしにくくなります。また、手根管症候群ではしびれが先行することが多く、親指、人差し指、中指、薬指の半分にしびれがみられます。装具や内服、注射で治療を行いますが、症状改善がみられなければ手術で正中神経への圧迫を取り除きます。
脳神経外科領域を中心にして記載させていただきましたが、この他にも、糖尿病や甲状腺機能低下症などの代謝・内分泌疾患によるしびれ、膠原病や血管炎によるしびれ、低栄養によるしびれ、電解質異常によるしびれ、過呼吸によるしびれなど、しびれを生じる疾患は多くあります。
しびれは、まず緊急性の高い疾患から調べていくのが望ましいと考えられます。最も緊急性の高い疾患は脳卒中であり、ギラン・バレー症候群や麻痺を伴うような脊髄疾患がこれに準じます。また、しびれは糖尿病や膠原病をはじめ、もともとの疾患に関連することが多いため、かかりつけ医へご相談されることも早期の診断・治療へつながります。