片頭痛
強い片頭痛は日常生活の妨げになります


 片頭痛はとても身近な疾患で、一般的にも良く知られています。この記事を読まれているご自身も片頭痛であったり、また片頭痛をお持ちのご家族もいらっしゃるのではないでしょうか?わが国の15歳以上を対象とした疫学統計では、片頭痛をお持ちの方は人口の8.4%です。ただ、片頭痛の患者さんで実際に病院を受診されたことがある方は、ずっと少ないと思われます。片頭痛は症状の幅が広く、数ヶ月に一回くらいで寝ていれば治るという場合もあります。月に一回くらいで市販薬ですぐに良くなる方もおられます。数日にわたる強い頭痛と嘔吐のために日常生活に支障をきたしている場合も、少なくありません。また、片頭痛は一般的には20歳から40歳代の女性に多いのですが、小学生のころから片頭痛がみられることもあります。
 
片頭痛の原因
 片頭痛を起こすときには、脳にいくつかの変化が生じています。代表的なものとしては、脳血管の拡張、皮質拡延性抑制といわれる大脳皮質神経細胞の過剰興奮、脳血管や硬膜血管に分布している痛みを感じる三叉神経終末の活性化、疼痛を制御している脳幹部の変化などがあります。頭痛そのものに関与しているのは、三叉神経終末の活性化と脳幹部の変化と考えられています。この片頭痛の病態を考慮して、治療計画が立てられています。
 
片頭痛の症状
 片頭痛の頭痛で多くみられるものは、前頭部のズキズキとした頭痛で、片側や両側にみられます。4時間から3日間ほど続く頭痛ですが、お薬を内服した場合にはもっと短い期間でおさまる、また寝てしまうと次の日には治っているというのも外来でよくきかれます。頭痛時には歩いたり、家事をすることで頭痛が悪化することが多いので、片頭痛中はじっと静かに横になることを希望されます。吐き気や嘔吐があったり、普段気にならない音や光が気になる音過敏・光過敏がでることもあります。
 また、2割くらいの患者さんには、片頭痛の前に前兆がでることがあります。一番多いのは目の症状で、キラキラとした蛍光灯の様なものが見えたり、あるいは視野が消えたり、チクチクした感覚や鈍い感覚があります。いずれも数分から数十分でよくなり、それから頭痛が始まります。その他の前兆としては、しゃべりにくさ、めまい、耳鳴りなどがあります。
 
片頭痛の治療
 片頭痛の治療は、頭痛が出現した時の急性期治療と、頭痛を少なくする・軽くする・短くするを目的とした予防療法があります。
 治療薬は、内服治療が中心となりますが、食事や生活に気をつける事も大切です。
 
 急性期治療では頭痛を速やかに治すことが目的です。症状に応じてお薬が選択されます。軽い頭痛であれば、病院で処方される一般的な鎮痛剤、あるいは薬局で購入できる市販薬で対応します。症状が強くなったり、これまでのお薬の効果がなくなるようであれば、片頭痛専用のお薬であるトリプタンの内服が推奨されます。トリプタンは内服以外に、点鼻薬もあります。また、日本国内で販売されているトリプタンは5種類あって、それぞれに特性があり特に効きの早さや持続時間に差があります。患者さんの頭痛の状態にあわせてお薬を選択します。急性期治療でのお薬は使い過ぎに注意が必要です。あまり内服しすぎると薬物乱用頭痛をきたし、お薬のせいで頭痛がするようになります。目安として月に10日以上の内服を3ヶ月つづけると薬物乱用頭痛になる可能性があるので、注意が必要です。  
 予防療法は、頭痛時に内服するのではなくて、毎日の内服が基本となります。日本国内では、保険適用あるいはそれに準じる数種類のお薬が推奨されています。いずれのお薬も一定の効果が期待できますが、ケースバイケースで患者さんの状態にあわせて選択していきます。
 予防療法を開始するタイミングとしては、急性期治療薬の服薬回数が多くなった場合、片頭痛が変化して強くなり従来の急性期治療では効果が少ない場合などです。おおよそ月に2回以上の強い片頭痛であれば、予防療法を検討するタイミングと言われています。いわば片頭痛を軽くする予防療法ですが、その他のメリットとしては急性期治療でのお薬が減る事で薬物乱用頭痛の発症を防止したり、片頭痛の慢性化を予防する効果があげられます。経済的にも負担が少なくなる事が多いです。
 
片頭痛の経過
 片頭痛は年齢とともに少しずつ変化してきます。若いときにはひどかったけど今は軽い、前頭部の頭痛が後頭部に移った、最近になって頭痛時に頭や顔の皮膚がピリピリするようになった、などです。これらはいずれも片頭痛の変化を示していて最初の方は部分寛解例、二番目の方は変容性片頭痛、三番目の方は片頭痛の慢性化と考えられます。文献的にも、片頭痛は30歳代が最も多く60歳以降では有病率はとても少なくなります。また一年ごとの調査では、一年後に8割強の方は変化なし、1割強の方は改善、3%の方は悪化しています。これらは片頭痛が年齢とともに軽快する傾向にあることを示しています。ただし、数年という単位で軽快していくため、それまでの間は生活や食事などに注意し、適切な内服治療を行う必要があります。そして、悪化する場合には更にしっかりと治療をする必要があります。
 
食事や生活で気をつけること
 片頭痛を誘発しないように、また悪化させないように、食事や生活で気をつけることはあります。
 ストレスとはうまく付き合いましょう。発散する方法をいくつか持っていると良いです。睡眠はしっかり取りましょう。ただし、昼近くまで寝ているよう取り過ぎはよくありません。雨が降りそうなジメジメした天気の時には、片頭痛になりやすいので他の誘因は特に避けるようにしましょう。食生活では赤ワインが誘発因子として有名です。またチョコレートやチーズなどの食品もあげられることがあります。ただ、食品については誘発されない方も多く個人差が大きいので参考程度でよいと思います。肥満は避けましょう、そしていびきや睡眠時無呼吸症候群の方は治療をしましょう。
 総合的に考えると、バランスのとれた食事と規則正しい生活が片頭痛を遠ざけてくれるようです。