くも膜下出血 85%が脳動脈瘤の破裂による
くも膜下出血は、脳を覆っているくも膜下腔への出血です。くも膜下出血の85%は脳動脈瘤の破裂によるものです。多くの場合、激しい頭痛と嘔吐で発症します。さらに、意識障害を来すこともあり、さらに重篤であると呼吸や心停止など突然死する場合もあります。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の死亡率は約30%といわれていて、後遺症も約30%、症状なく職場復帰される方も約30%です。現在、くも膜下出血の重症度は5段階に分類(WFNS分類)されていますが、発症時の状態が重症であればあるほど死亡率や後遺症の合併率が高く、軽症であればあるほど自宅や職場への復帰率が高いです。
治療について
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血では、乗り越えるべきハードルが3つあります。
一つ目は、破裂した脳動脈瘤からの再出血を防ぐ事です。再出血を繰り返せば繰り返すほど、患者さんの生命予後や機能予後は悪化します。この再出血を防ぐために、破裂した脳動脈瘤を開頭してクリップで遮断するか、血管内からコイルで塞栓します。クリップかコイルかの選択は、動脈瘤が出来た場所や動脈瘤の形、そして全身の状態を評価して総合的に決めていきます。
二つ目のハードルは、脳血管攣縮といわれる遅発性脳梗塞の発症です。これはくも膜下腔に広がった血腫が血管を強く収縮させることで、血管に血液が流れにくくなり脳梗塞を発症します。脳血管攣縮による脳梗塞では、麻痺や意識障害を呈する事が多く、発症が危ぶまれる2週間の間は厳重な管理を行います。血管を拡張させるお薬や血液循環を良くするお薬、脳保護剤などの点滴で治療をしますが、それでも脳血管攣縮が強く出現した場合には血管カテーテルから直接血管にお薬を注入したり、バルーンで拡張させる方法をとることもあります。
そして三つ目は水頭症です。くも膜下出血が髄液の流れを滞らせるため、生理的な髄液の吸収が障害されて発症します。記銘力障害や歩行障害や尿失禁がゆるやかに出現します。予後は良好ですが、吸収しきれない髄液を細いチューブをつかってお腹に流す脳室腹腔シャント手術あるいは腰椎くも膜下腔腹腔シャント手術を行う必要があります。
くも膜下出血の予防について
くも膜下出血の原因となる未破裂脳動脈瘤の有無を確認することがまず必要です。未破裂脳動脈瘤は、成人の約5%が保有しています。予防は外科的には開頭でのクリップや血管内治療でのコイル塞栓ですが、内科的には禁煙の徹底、大量飲酒を防ぐこと、高血圧の治療をすることが必要になります。未破裂脳動脈瘤の手術時期については、未破裂脳動脈瘤の項目をご参照ください。