未破裂脳動脈瘤
その中で、くも膜下出血を来すのは年間約1%


未破裂脳動脈瘤について
 脳動脈瘤は頭蓋内の動脈に形成されたコブのことです。そのうち動脈瘤が破れていないものを未破裂脳動脈瘤といいます。有病率が比較的高く、成人の約5%に観察され、脳ドックなどで見つかることも多い疾患です。未破裂脳動脈瘤は破裂して出血するとくも膜下出血をきたしますが、全ての脳動脈瘤が破裂する訳ではありません。未破裂脳動脈瘤の経過については、2003年にinternational study of unruptured intracranial aneurysms (ISUIA)という調査結果が発表されたのを皮切りに、2012年には日本脳神経外科学会からunruptured cerebral aneurysms (UCAS) Japanが結果発表されました。UCAS Japanは約5700名日本人の患者さん、6700の動脈瘤を調査したもので、人種差などを考慮すると私たち日本人に合っている調査と考えられます。UCAS Japanの結果からは、未破裂脳動脈瘤の年間出血率は平均して0.95%というものでした。また、この調査では未破裂脳動脈瘤の大きさ、形、場所によっても分類を行っていてかなり詳細な検討が可能になりました。大きい、形が不整、前交通動脈や後交通動脈は、そうでないものに比べると出血率が高くなります。
 
治療方法について
 未破裂脳動脈瘤の治療法は、開頭して動脈瘤をクリップで遮断するか、血管内から動脈瘤をコイルで塞栓します。クリップかコイルかの選択は、動脈瘤が出来た場所や動脈瘤の形、そして全身の状態を評価して総合的に決めていきます。いずれの治療法でも手術の危険性はあり、現在でも数%の合併症はみられます。
 このため、手術を行うにあたっては、未破裂脳動脈瘤の予想される年間出血率と患者さんの年齢、大きさ、形、場所などを勘案します。もちろん、患者さんやご家族の考え方も十分に反映されて最終的に判断がなされます。
 一般的に推奨されているのは、①大きさが5-7mm以上のとき、あるいは②5-7mm未満だとしても症状が出ているとき、前交通動脈、後交通動脈にあるとき、形が不整なとき、です。そして10-15年程度の余命がある場合です。この基準はこれまでの調査データから検討された推奨基準ですが、必ずしも絶対的な基準ではなく、最終的には個別に考えていくべきです。
 
現時点では手術を行わずに経過観察する場合
 経過を観察する場合には、半年から1年ごとにMRIなどでの画像検査が必要です。だんだんと大きくなり、また形が不整になるようなら手術を考慮します。年間4-7%の動脈瘤は増大すると考えられているので、画像検査を経時的に行う事は大変重要です。また、動脈瘤の破裂については、危険因子が分かっています。大量の飲酒・喫煙・高血圧は大きな因子で、未破裂脳動脈瘤がみつかった場合はただちに節酒・禁煙・高血圧の治療が必要になります。
 また経過中に、強い頭痛や、瞳孔が大きくなったり、複視(物が二重に見える)、眼瞼下垂(片方のまぶたが下がる)などの症状が出現した場合は、破裂ないし破裂の兆候ですので病院受診が必要です。
 
 未破裂脳動脈瘤が見つかるとどうしても動揺する患者様はいらっしゃいます。症状もなくたまたま見つかり、ご本人にとっては青天の霹靂です。そのため、正確な情報に基づいた安心できる説明をクリニックでは心がけています。